多分、駄文

問わず語りの極み

映画①

今日見た映画と感想を。

 

一本目は『NOPE』

序盤は、不気味さや不穏さが存分に匂わされていて、ぞくぞくした。特にジュピターパークやチューブマンなどの無機物が効果的に怖さを演出していた。

中盤は、緊迫感の方に焦点が当てられていたように感じる。血や無機物の雨のシーンは迫力があったし、窓を突き破る馬の像なども良かった。あと「動かない雲」というだけで恐ろしさがあんなに表現できるのか、と思った。

まあここまではホラーの展開にはよくあるかな、とも思ったが、終盤から展開が一転する。チェーホフの銃とはよく言ったもので、今までの要素のほぼ全てを回収しながら、未確認生物をカメラに収めるために奮闘するという展開に移っていったのは驚いた。ジージャンの異形さや神々しさのようなものも、ホラー特有のおどろおどろしさとは違っていて見ていて楽しかった。この手の映画でありながらハッピーエンドだったのもそれはそれでよい、と思う。

牧場という舞台もよい。広い荒野という殺風景さが序盤の不気味さにも、終盤のジージャンとの対決の壮大さにも効果的であった。さらに、馬というモチーフも良い。最初はヨハネの黙示録の死の騎士の象徴かな、と思っていたのだが(アブダクションは牛のイメージだったので)、騎士は救済の象徴でもあり、最後のカタルシスに通じているのだと納得した。

ただ、浮いてた靴は何だったんだ?

あとAKIRAのバイクシーンパロはやっぱいいな。

 

二本目は『すずめの戸締り』

なんか今更感があるが、せっかく金ローでやってたから観た。

全体として受けた印象は村上春樹の『神の子どもたちはみな踊る』内の短篇「かえるくん、東京を救う」を拡大して上手く新海誠風に改変し、東日本大震災などを経験した現代の日本に落とし込んだ素晴らしい作品だと思った。

主人公すずめの動機が恋一直線だったのも興味深かった。新海誠作品は『君の名は』と『天気の子』しか見ていないが、特に『天気の子』に顕著だったように、世界か目の前の一人かという選択を重要視しているように見える。今回も草太が要石になるか、東京にみみずが落ちるかという選択があった。僕はRADWIMPSも好きなのだが、「ます。」という曲の歌詞に

「あなた一人と 他全人類
どちらか一つ 救うとしたら
どっちだろかな?
迷わずYOU!!!!」
という歌詞がある。こういった価値観の共鳴が今の結びつきを生んでいるのかもな、と思った。
震災というテーマの中で、シリアスに振り切らず人と人とのつながりの温かみや過去との向き合いなどに着目していた点もよかった。戸締りという行為に込められた意味や常世での幼いすずめとのやり取り、黒塗りの日記など印象深い点を挙げればきりがないほどである。改めて、震災に向き合う機会にもなったし、とにかく素晴らしい作品だったと思う。
あとやっぱ映像が格段に美しい。
廃墟行きたい。