多分、駄文

問わず語りの極み

本②

最近あまり本が読めていなかったが、直近で読んだ2冊の本について感想などを書いていく。

 

1冊目はレイモンド・カーヴァー『愛について語るときに我々の語ること』である。

村上春樹訳のもので読んだ。終盤になるにつれて面白かった。特にタイトルの秀逸さが素晴らしく、「私の父が死んだ三番目の原因」や「ある日常的力学」などは印象に残る。私は村上春樹の魅力は、会話劇にあると思っているのだが、訳においてもその絶妙なニュアンスが維持されており、そのうえ原作の世界観を(おそらく)壊していないだろうと思えた。未熟さ故、愛について、私はその多くを経験していないが、死ぬ間際に思い出すのはこういう本かもしれないと思った。

 

2冊目は佐藤友哉フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』である。

メフィスト賞の系譜を受け継いだ怪作といえるだろう。京極夏彦などの影響がみられつつも、そこに作者特有の黒胡椒が混ぜ込まれており、スパイスが存分に効いた作品として仕上がっている。舞城などが好きな人に、この作品が嫌いな人はいないだろう。佐藤友哉は初読なので掴めていないが、舞城のような「愛の作家」なのだろうか。これから他の作品も読んでいきたい。